カナダの民間企業「ブリストル・エアロスペース」が開発・製造した観測ロケット．型紙は“Zach's PaperSat Designs”から．
ブラック・ブラント Ⅹから派生した4段式の観測ロケットで，「タロス」を第一段，「トーラス」を第二段，ブラック・ブラント Ⅴを第三段，そして「ニーカ」を第四段に用いている．
ブラック・ブラント ⅩⅡの初の打ち上げは，1988年9月30日．以来，アメリカ東海岸のワロップ島の他，アラスカのポーカー・フラット，ノルウェーのアンドーヤからも打ち上げられているが，ノルウェーからの打ち上げでは「危機的な事件」も発生している．
1995年1月25日，電離層観測のため，ノルウェーのアンドーヤからスバールバル諸島の方向にこのロケットが打ち上げられた．良くないことに，この時の飛行経路はロシア政府が核戦争時にアメリカの弾道ミサイルが飛行すると想定していた経路に非常に近く，また，ロケットそのものの大きさもアメリカの潜水艦発射型弾道ミサイル「トライデントD-5」に良く似ていたのだった．さらに，ノルウェーは各国にロケット打ち上げの通告を行っていたが，およそ一ヶ月間の期間を示していただけで，具体的な日程はロシア政府には伝わっておらず，ロシアのミサイル攻撃警告システムが警報を発してしまう事態となってしまった．クレムリンでは大統領を含む政府高官，軍指導部による緊急会議が開かれ，戦略ミサイル軍統制端末が起動された．指導者たちがミサイルの軌道に注目し，ロシアがアメリカに対して核攻撃を行うかどうかが議論されていた．幸い，核攻撃が決定されることがないまま，ロケットの軌道はスバールバル諸島の方向に逸れ，その近海に落下したことが観測されて，核戦争の悪夢は回避されたのであった．
この後，ノルウェーからの打ち上げではノルウェー政府からの他，独自ルートでアメリカ政府からもロシア政府に対して打ち上げ予告が伝えられるなどの対策が行われ，ブラック・ブラントⅩⅡは2022年現在でも現役で活躍している．
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総重量：5300kg 全長：17m 直径：0.76m |
